合格体験記

京大・文 合格体験記  金本剛志(大阪星光)

 世間でも常識とされているのは、「浪人は伸びないから現役の方が有利。」ということでしょう。僕の現役時代はそれこそ浪人などもってのほかと思っていたし、それについては漠然と考えていましたが、僕は一浪し(神大不合格)、京大に合格した今、自分は「敵なし浪人」になれたと自信をもって言えます。なぜこのようなことが言えるのか。浪人してたどり着いた僕の考えは、浪人は二種類の勉強を自覚することが肝心、ということです。「伸ばす勉強」 と「維持の勉強」です。
 大抵の浪人の者は難関校にかつて挑戦したという過去を持っているので、ほとんどの科目は完成しており(よって伸びないと言われる)、新たに学習する事項はありません。もちろん苦手科目(僕は数学)には学習の余地は残っていますが、特に文系科目のほとんどは「伸びない」の筆頭ではないでしょうか。その伸びない科目で先程の「伸ばす勉強」をすることは受験勉強というものから逸脱する行為であり、点数アップにはなんら繋がりません。よって伸ばす余地もない科目を伸ばそうとしたり、さらにアホなのは伸びないからといってほったらかしにしたりするのは浪人必敗パターンです。
 僕自身最初はそのパターンに陥りました。単語帳を現役時代の二冊に加え、マイナーな単語帳三冊に手を出しましたが実際笑ってしまうほど効果はありませんでした。esculentとかね(笑)。伸びないからといってほったらかしにするのは基礎の忘却や英文古文への慣れがにぶるなどまさに本末転倒で、その低下した部分をもう一度やり直す時間を無駄遣いするというまさに本末転倒です。本末転倒。よって、浪人に必要なのは苦手科目の補強と、その他の科目の力を落とさない程度に毎日続ける「維持の勉強」、のみです。
 こう書くとなんだそれだけか、と思われがちですが、落とし穴は「維持の勉強」は「伸ばす勉強」と違い新たな発見もなく、地味でチョーオモンナイてことです。元々勉強それ自体を嫌悪している僕にとってこの毎日は地獄でした、この先何年生きれるかは分かりませんが、生涯これを超える地獄には巡り会わないでしょう。これを一年続けるメンタルがあるかどうかが「敵なし浪人」への道には最重要です。これを続けることにより苦手な数学に長い時間をかけ、残り科目は1日わずかの勉強をするだけで京大レベルに対応できたと言えます。
 次に浪人で自覚すべきことは現役との間の生活習慣のギャップです。当然浪人、さらに宅浪になってしまうと、高校での9時の始業のために早起きし、6時間授業を受け、さらには友人との会話等全て無くなってしまうので日常生活精神状態がグチャグチャになること請け合いです。もちろんここで言いたいのは授業6時間に加え宅浪は通学時間2時間(これが宅浪最大のメリット)が浮くので現役に比べ自分の勉強時間が倍以上増えるということです。1日に最大で4時間、授業以外の自習を確実にしなければどんどん遅れていく現役と比べ浪人は余裕ができます。もちろんそこが時間をもてあましすぎてダラけるという皆が陥る落とし穴になるのですが。事実この一年で起床時間は早くて10時、「朝食」の概念が完全に消え失せるというグチャグチャ具合でしたが、それでも現役の二倍以上の勉強ができました。持て余す時間を先程のオモンナイ「維持の勉強」と嫌いな数学に費やすのは生き地獄でしたが。
 とはいってももちろん浪人にも弱点はあり、それは現役以上の生死をかけたプレッシャーがあるということです。現役受験においては不合格でもその不合格の背景には素晴らしい高校生活があり、まぁ楽しかったしなぁ、ってなことになりうるでしょうが、浪人の不合格の背景には地味な勉強の日々しかありません。浪人は落ちれば一年を無駄に捨てた、ただのクズです。なんの救いもありません。その部分を非常にネガに受け止めて勉強するか、逆に奮起するかは人によりけりでしょう。
 まあ色々言いましたが、結局はメンタルやら意志やらが大切っていう受験では当たり前のこと言ってます。
 ではなぜそのようなメンタル勝負をより強いられる週一の葦牙のみの半宅浪を選択したかですが、もちろん金銭面を考慮してのこともありますが、大手の良さと、少人数の良さとどちらが自分に合うか、で選んだのと、自習室は結局一旦馴染むと全く集中できなくなるっていうのとです(自分は。)。ガンガン添削の依頼にいき、質問しにいけるタイプの人間ではないので、葦牙での一人一人の解答を聞いてくれる授業は自分の英語勉強には最もフィットしていました。集団授業ではとてもできない形式です。特に英作文はこの一年で葦牙の授業により「伸ばす勉強」ができた唯一の文系科目です。表現のおかしさや根本的な文法ミスを指摘して生徒の解答例を手直ししながら合格点をとれる作例を示してくれる葦牙の授業は京大対策に最適でした。もちろん大手には大手の良さが沢山あるでしょうし、自分の科目の得手不得手や性格と相談して塾は決めるべきです。
 最後になりましたが、他人のアドバイスも大事ですが、最後には何が自分にあっているか自分にフィットした選択をしましょう。はっきりいって真面目にやった浪人が、楽しいことで忙しい現役に負けるわけがない。もっとはっきり言うと、同じ土俵にすら立ってない。浪人最強。浪人万歳。

戻る