6. 私立中・高校の誇大広告に対する思い込み

学校情報には客観的態度を!
 ある中高一貫校に入っただけで、最低、阪大くらいは合格すると思っていませんか。また、この学校へ入りさえしたら、関関同立くらいは合格するはずだと思っていませんか。
一部の私立学校で、優秀な生徒に学校側が受験料を出し、10でも20でも大学(学部)を受験させるということが明るみに出たのはそれほど前のことではありませ ん。学校側が発表するのは合格者の延べ人数です。したがって、一クラス40人クラスで、実質的に関関同立に合格できる実力をもった生徒が4人しかいなかったとして も、今日の複雑な入試制度を利用すれば、4人に10回受験させ、すべて合格すれば、延べ40人が合格したことになり、さもこの高校では、ほとんどの生徒が関関同立く らいは、全員合格できるのだという幻想をふりまくことができるのです。
また、ある中高一貫校では、この学校へ入学さえすれば最低、阪大くらいは合格するという幻想をふりまきます。私立など眼中にないと言わんばかりに、合格発表者名 に私立を含めないという学校もあります。このような学校へ入学すると、自分の実力と自分が努力して達することができる目標大学との差に盲目となり、自分は京大を目 指しさえすれば合格できるものだと思い込む生徒や親が出てきます。
普通、高1くらいまではこのような幻想に惑わされていても、高2、高3くらいになってくると徐々に、自分の実力が見えてきて、志望大学の選定やそのために、何を なすべきか、ということが見えてくるのですが、中には、高3になっても、幻想から目覚めることがなく、入試という現実に直面して、初めて少し目が覚めるという人もいます。
本屋などに行くと、「偏差値38から早稲田に合格!」などといった本が置いてあります。確かに潜在能力がある生徒は、あるきっかけで急伸する場合があります。 私の塾でも「奇跡の合格や!」と友だちや学校の先生に言われる生徒が出ます。合格体験談を学校で発表して欲しいと言われる生徒も出ます。学校ではクラスでビリの ような生徒が入試の頃にはクラスでトップグループに入り、無事、関大に合格したり、近大も危ういくらいの実力しかなかった生徒が、最後には国立大学に合格したりとい うこともあります。また、中学の頃には、定期試験で10点もとれず、退学に追い込まれそうになった生徒が、関関同立レベルの大学に合格するだけの実力をつけたこともあります。
このような生徒は、受験勉強を始めるまでは、模試を受ければ判定はEです。Eは「絶望的」という意味です。しかし、潜在能力に見合った努力をひたすら続けている と、ちゃんと結果が出てくるのです。私は、努力が奇跡を生むと信じています。英語の勉強はシンプルです。そのシンプルな勉強に耐えて、努力し続けると、教えている 私に「こいつ少し分かるようになってきたな」という印象を与える日がやってきます。
そうなればしめたものです。このような生徒は入試で必ず結果を出してきます。京大を受験する生徒ができているとは限らないのです。「おいおい、こんな力で京大を受 けるのか?」と言いたい生徒もいます。しかし、取り敢えず最後まで塾のテキストを勉強し、私に言われたことをやり続けていると、ある日、「おっ!」と思わせる日が きます。英語だけ見れば、「お前の力じゃ、関関同立も無理」と言いたい生徒が何カ月もやっているとそうなるのです。
私はそれぞれの生徒の潜在能力に見合った努力をさせたいと考え、また生徒にそのように勉強をして欲しいと願っているのです。
潜在能力がないのにプライドだけ植え付けられた場合、その親子が挫折した時のことを考えると忸怩たるものがあります。目標をちゃんと定めることはとても大切です。 勉強が好きという生徒はごく一部です。だからこそ目標をしっかり定め、動機をしっかり持って、そのためにやるべきことをコツコツやる必要があるのです。
学校側の誇大広告を冷静に判断するだけの心のゆとりを親御さんにも持って頂き、子どもの潜在能力に見合った環境作り、励まし方をして頂きたいものだと念じています。